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-  (仮称)ちよだアートスクエアについて

(仮称)ちよだアートスクエア 統括ディレクター:中村政人

■表現活動を街と循環させる
従来の美術館、博物館、劇場等は、アーティストの完成した作品を重視し、その作品の付加価値によって文化的、芸術的評価をしてきています。優れた芸術家における最高傑作をコレクション、展示、保管することが、そのミッションでありました。しかし、日本中の多くの美術館が、本来のそのミッションさえ維持できなくなってきていることは言うまでもありません。その問題の多くは、アーティストの存在、その生き方、思想を伝えることではなく、作品の投資的付加価値を芸術として固定的に展示してきたことにあります。そして、美術館の多くが美術の派生する現場(地域)と関係を構築せず、優れたモノだけを対象にしたために、発展段階にある地域のアーティストの表現活動は育成されず、地域文化力とリンクをつなぐことができずにいます。成功した後のアーティストだけを対象にしていては、地域文化力は底上げされません。
アートセンターが街に開き、街のエネルギーとアーティスト(*注)の表現エネルギーが循環する文化芸術プログラムを主軸に置く事によって、地域に根付いてきた本質的な地域文化力が向上し、そして地域住民の「生活の質」が高まっていくのです。


■街の創造力と共に歩む運営団体として
私たちは、母体となるアーティストイニシアティブ コマンドNとして10年間千代田区において芸術活動を続けてきています。10年間で70を越えるアートプロジェクト、300名以上の国内外のアーティストとのコラボレーションを実践してきています。そのほとんどの表現は、街に触発された固有の作品を制作発表しようと試みます。つまりアーティストの表現を喚起するエネルギーそのものが「街の創造力」と言えるのです。アートとは、アーティストだけによって創られるのではなく、街が培ってきた歴史性や経済性を含む地域の創造力によって創られていくものです。言い方を変えると、アーティスト(*注)とは、その街の見えない力を視覚化する卓越した創造力・人間力を持っている存在なのです。そのためにも専門性と意志を持ったそのつなぎ手として、アーティストと共に悩み、創造の喜びを分かち合う、有機的な活動体としての組織が必要とされるのです。純粋なアートの現場で長年戦ってきた私たちだからこそ、初めてリアリティを持って言い得ることなのです。


■期待される効果
この新しいアートセンターは、地域全体に「創造性という人間の本能、その魂」を呼び覚まし、精神を浄化し能動力を高める効果があります。また、経済性優先だけで現れてくる表面的文化芸術意識では解決できない、一生かけて創りたいことや、伝えたいことに対し純粋に向き合う生き方をサポートします。創造力は、心と体に直結しているのです。この場所が地域に根付く文化力の創造性を促し、本質的な「生活の質」を高める核心的な場所となることを目ざします。


(*注)アーティスト
ここでの「アーティスト」とは、ジャンルを問わず、また現代、古典芸能まで含む広い意味と考えます。例えば人間国宝の○○氏や、現代にもつながる卓越した伝統技術を持つ職人の○○氏もアーティストとして捉えます。現代美術家、現代音楽家、映画監督、俳優、ミュージシャン、アキバのオタクアーティスト、伝統文化まで現代の日本文化を発信する多様な文化人を対象と考えます。 大切なのは、結果ではなく何かを創ろうとする動機とそのプロセスであり、表現制作活動そのものです。

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